今回、紹介するのは、「闇金ウシジマくん」です。
タチの悪い闇金業者「カウカウファイナンス」の社長・ウシジマと、ウシジマに食い物にされていく顧客たちの転落を描いたストーリーです。
闇金ウシジマくんは小学館の公式アプリ「マンガワン」で無料公開されています。
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「闇金ウシジマくん」のあらすじ
ウシジマが経営しているのは、トイチならぬトゴ。つまり、10日で5割という法外な利息が発生する闇金業者「カウカウファイナンス」。
こんな悪徳業者から借金をする人間は、いわゆる「社会の最底辺」に位置する人びと。
ウシジマは顧客を人間とは見なさず、巧妙な罠を仕掛け、転落させていきます。
他の金融機関からは借金ができなくなり、行き場を失った顧客に対し、初めは快くお金を貸します。
何度かそれを繰り返し、顧客の逃げ場を奪った後に、徹底的にお金を搾り取るのです。
ウシジマの会社から融資を受け、地獄に突き落とされていく人びとの姿を描いたお話です。
ウシジマ社長の恐ろしさ
ウシジマは、非情で狡猾です。
カモとなる顧客の性質を一瞬で嗅ぎ分け、どうすれば最大限のお金を引っ張り出せるかを判断し、罠を仕掛けていくのです。
ひとたびターゲットとなれば、大抵の人間はアリ地獄に落とされたように、二度と這い上がれなくなります。
ウシジマは、顧客を人間とは思っていません。
従って彼らの人生がどうなろうが、それこそ命を落とそうが、知ったことではないのです。
また、ウシジマの恐ろしいところは、自身の会社・カウカウファイナンスで働く従業員のことさえも、信用していないように見えるところです。
ウシジマにとっては、従業員すら人間ではないのでしょう。
まるで将棋の駒のように、己の目的のために使っているだけなのです。
ウシジマの餌食となる顧客たち
ウシジマの会社に融資をお願いしに来るのは、専業主婦、フリーター、サラリーマンなど、老若男女さまざまです。
例えば、ウシジマが「奴隷くん」と呼ぶのは、パチンコ依存症の専業主婦。
彼女たちからの搾取システムは、3万円を貸す代わりに、毎日1万五千円を必ず返済させる、というルールが敷かれています。
つまりウシジマ社長は、2日で元の3万円を回収することができますが、主婦たちの借金は膨らむ一方です。
そうして主婦が借金返済できなくなれば、旦那から返済させるという算段です。
顧客本人だけでなく、その家族さえもが搾取のターゲットになっていくのです。
ウシジマの、「バカな顧客」を食い物にする技は超一流です。
彼はもともと、パチンコ依存症や多重債務者など、社会的に見て底辺の人間を相手にしているので、容赦ないのです。
「身の程知らずのクズどもに終止符を打つのが仕事だ」と言い切り、徹底的に追い詰めていきます。
例えば相手が女であれば、借金返済が滞ると体を売らせるなど、お金を回収するためには手段を選びません。
その非情さを見ると暗鬱とした気持ちになるのですが、ある意味ではウシジマ社長の言う通りだとも思えてしまいます。
「こいつらは人間じゃねえ。同情に値する奴なんか1人もいねえ」確かにそうなのです。
パチンコ依存症。風俗依存症。ギャンブル依存症。あげくの多重債務…
ウシジマの餌食になる人びとは、真っ当に生きていない者ばかりです。
色々な人間がウシジマによって堕とされていきますが、顧客の共通点は、「信用できる人間がいないこと」かなと思います。
顧客になる人びとは皆、誰にも心を開いておらず、助けを求められる仲間がいないのです。
顧客たちは「心の貧しさ」故に、ウシジマの魔手から逃れられないのでしょうね。
読み進めていくうちに、ウシジマの方が正義であるかのように、洗脳されていく感覚があります。
社会の底辺である人間が、ウシジマに堕とされていくのが、痛快に思えるときがあるのです。
まるで、「天誅が下されている」のを見たみたいに。
ウシジマ社長の本当の恐ろしさは、強烈な説得力を持ったカリスマ性なのかも知れません。
人が堕ちていく描写のリアリティ
ウシジマくんといえば、人間の転落していく様子のリアリティです。
顧客の思考、そして追い詰められていく過程が克明に描かれており、逃げられなくなっていく様を、まざまざと見せつけられます。
顧客も、何とか逃げ出そうと足掻くのですが、結局ウシジマに骨の髄までしゃぶられていくのです。
ウシジマの手口はいつも、恐ろしいほど鮮やかです。
借金を返済させ、さらにお金を搾り取るために、どんどん相手を追い詰めていきます。
大抵の顧客が、堕ちるところまで堕ちていくのです。
現実では見たことのない「社会の闇」と「人間の闇」を突きつけられますね。(自分も一歩足を踏み外せば、社会の闇に転落してしまうかも知れない)という、底知れぬ恐怖さえ感じます。
「闇金ウシジマくん」の感想・ネタバレまとめ
闇金業者を扱ったお話ですので、「人間の汚い部分」がクローズアップされる内容が多いです。
ウシジマ社長は容赦無いですし、顧客を始めとした登場人物は、いわゆる社会の屑・底辺ばかりです。
リンチなどの暴力描写や、女性が蹂躙される描写なども多くありますので、
読んでいると暗鬱とした気持ちになるかも知れません。
しかし、ウシジマくんで描写されている「人間の汚い部分」って、多分、誰もが少なからず持っているものだと思うんですね。
例えば、人を信用しない・人を利用する・人を騙す、などの自分本位さとか。
信頼できる友人が居ない・助けてくれる仲間が居ない、などの孤独感とか。(実際に、闇金に手を出すところまでは堕ちないにしても、です)
そういう、誰もが内に秘めている「心の闇」をリアルに感じられる、強烈なインパクトを持った作品だと思います。
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